『虞美人艸』の修復


書名:虞美人艸

著者:夏目漱石

発行:明治41年1月1日(1908年)/春陽堂

判型:菊版 H226×163×D44mm /帙 H225×158×D50mm

製本:紙装(石版、木版)、くるみ製本、2本の支持体入りの抜き綴じ、天色染め

装幀:橋口五葉 

所蔵:個人蔵

 

保存状態:本文の綴じの緩み、小口折れ、破れ、表紙との接続外れ

後ろの見返しは署名を隠すためか、遊び紙を貼り合わせてある。

帙は折り目部分外側がほぼ切れている。

 

作業内容:ドライクリーニング。見返し紙を外して、本文と表紙を分ける。

後ろ見返しには毛筆の署名あり。背の寒冷紗などを除去、綴じ糸を外して折丁にする。

抜き綴じで綴じられていて、折丁の一箇所しか糸が通っていない部分もあった。

中身は、折丁の破れなどを和紙で補修。

新たな見返し紙に半葉の紙を加えて、折丁を整え、3本の支持体を通して細い麻糸で本かがりで綴じる。

背固めの和紙を貼り、寒冷紗、クータを付けて、本体を整える。

表紙は、背の内側に残っている膠を除去し、楮和紙で補強、欠損部分は色和紙で補修する。

表紙の擦れて薄くなっている部分などを楮和紙や典具帖和紙で補修する。

本文と表紙の背を接続し、半葉の紙で段差を埋めてから見返し用紙を貼り付ける。

 

帙は、内側の和紙を外し、ジョイント部分を和紙で補強する。

表側の切れているジョイント部を色和紙で補修し、擦れている部分に水彩絵具で補彩する。

縁にも染め典具帖和紙を貼り、アクリルメディウムで補強する。

 

修復前

 表紙のみぞ、かどなどの擦れ

帙は接続部が切れかかっている


修復後

表紙は色和紙で補修

帙の接続部は内側と外側に色和紙で補修


 

使用材料:楮和紙各種、寒冷紗、中性紙、生麩糊、ボンド、水彩絵具、アクリルメディウム

 

修復・記録:藤井敬子