19世紀末クロス装洋書の修復


書名: UNBEATEN TRACKS IN JAPAN (日本紀行) 

著者: ISABELLA L. BIRD  (イザベラ・バード)

出版社:LONDON, JOHN MARRY  出版年:1888 3TH EDITION

判型:196×139×30㎜     ページ数:P.336 + 36

個人蔵書

 

製本仕様

総クロス装。丸背糸綴じ/支持体は麻紐3本、2折ずつの抜き綴じ

貼り見返し/黒色、花ぎれ無し

 

保存状態

表紙と中身が外れ、綴じの割れや外れもあり、閲覧できない状態だった。

表紙の背部に欠損、角にも損傷あり。

中身は、前の3分の1に綴じの緩みや綴じ糸の切断あり。外れた折丁は周囲が破れており、過去に直したテープも残っていた。前側の見返しは貼り直した跡があり、ノド部に黒く塗った紙を貼っていた。

 

修復方針

読める状態に戻す。出来る限り元装の素材・装丁を残して修復し、今後の保存に備えて補強をする。

 

作業内容

中身の修理:綴じを解体し、埃除去などのドライクリーニング。破れを和紙で修理補強する。丁合わせをして、綴じ直し(60番の細い糸を使用し、抜き綴じはしない)。背に寒冷紗、背紙、クータ(筒状のジョイント)をつける。

表紙の修理:欠損部は裏打ちした色和紙で補修し、新規芯紙をつける。

組み立て後、見返しを戻してノド部に黑和紙を貼って補強。クロス背の補彩。背表紙全体にセルロース糊アルコール溶液を塗布。カイル・ラッパー式保存ケース(中身の落下を防ぐ台付き)を制作。

 

結果

元装を生かして強度をもつ修復ができた。依頼者様より、読めるようになって良かったとの感想をいただいた。

 

 修復前

修復後


 切れた見返し

修復後


割れた本文の綴じ

表紙の欠損部


解体後の折丁の補修

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


綴じ直し


使用材料 

楮和紙、色和紙黒、麻糸60番、麻紐、寒冷紗、中性紙、和紙糊、セルロース糊、ミックス糊(PVA)、
KluselGアルコール溶液、AFボード

 

修復・記録 近藤理恵